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ラ・ラ・ラ・メディテーション

ラ・ラ・ラ・メディテーション

カリール・ジブランの詩

カリール・ジブラーン(1883-1931)モスリム1

(愛について)

たとえ、その道がどんなに厳しく険しくても。
 愛の翼があなたがたを包んだなら、愛に身を委ねなさい。
 たとえ、その翼に潜む刃が、あなたがたを傷つけても。
 愛があなたがたに語りかけたなら、愛を信じなさい。
 たとえ、その声が、庭を荒らす北風のように、
 あなたがたの夢を打ち砕いても。


 愛はあなたがたを、麦の束のように刈り取り、
 あなたがたを打って、裸にし、ふるって、殻を取り、ひいて、
 白く粉にし、練って、しなやかにする。

 愛はこれだけのことを、あなたがたのうちに、
 あなたがたのためにするのです。
 あなたがたが自分の心の奥の謎をさとり、
 このさとりのうちに生命の心の一片(ひとひら)となるために。

 しかし、それを恐れ、愛の安らぎと楽しみだけを求めるのなら、
 むしろあなたがたの裸を被い、この愛の麦打ち場を避けて、
 あの季節のない世界へ行くがよい。
 そこでは笑っても心底から笑えず、
 泣いても流れるのは本当の涙ではない。


 愛は愛自身のほかの何も与えることなく、
 愛自らしか受けることしかできない。
 愛は所有せず、また所有させない。
 愛は愛だけで充分なのですから。

 愛の望みはただひとつ。愛自身を満たすことです。
 しかし、もしあなたがたが、愛していて、
 どうしてもなお望みがあるというのなら、
 その望みはこのようなものであるように。
 融けて、夜の間も自分の歌を歌っているせせらぎのようになること。
 愛のあまりの優しさに苦しむのを知ること。
 愛を自分で解釈して傷つくこと。
 そして、自由な、喜びで溢れた心で血を流すこと。
 夜明けに目覚め、飛び立つ思いで、愛の新しい一日のために
 感謝をささげること。
 昼下がりには静かに休らい、愛の恍惚を思い出して味わうこと。
 夕暮れには感謝に満ちて家路をたどること。
 そして、心では愛する人のために祈り、唇では賛美の歌を歌いながら
 眠りにつくこと。

(結婚について)

あなたがた2人は一緒に生まれた。
 それで、いつまでも一緒なのです。
 共に過ごした月日を死の白い翼が散らしても、
 あなたがたは一緒なのです。
 神の静かな追憶のうちでさえも、あなたがた2人は一緒なのです。
 しかし、それほど一緒の2人のあいだにも、自由な空間を置きなさい。
 そして、そこに天からの風をそよがせなさい。

 愛し合っていなさい。
 しかし、愛が足枷(あしかせ)にならないように。
 むしろ2人の魂の岸辺と岸辺のあいだに動く海があるように。
 おたがいの杯を満たし合いなさい。
 しかし、同じひとつの杯から飲まないように。
 おたがいにパンを分け合いなさい。
 しかし、同じひとつの塊を食べないように。
 一緒に歌い、一緒に踊り、共に楽しみなさい。
 しかし、おたがいに相手をひとりにさせなさい。
 ちょうど、リュードの弦がそれぞれでも同じ楽の音を奏でるように。
 おたがいに心を与え合いなさい。
 しかし、自分をあずけきってしまわないように。
 なぜなら、心というものは、あの生命の手だけがつかむもの。
 一緒に立っていなさい。
 しかし、近づき過ぎないように。
 なぜなら、神殿の柱はそれぞれ離れて立ち、
 樫の木と杉の木はおたがいの陰には育たないのですから。


(足かせ)

あなたが捨て去ろうとしているもの、
それが「煩わしさ」というものなら、それは自分で選んだもの。
無理に背負い込まされたものではない。

あなたが振り払おうとしているもの、
それが「不安」だというなら、
その不安の座はあなた方自身の中にあり、
不安を与える者の手の中にではない。

これら全てのものは、あなた方の存在の中で、
絶えず包みあって揺れ動いています。
望んだもの、恐れたもの、忌み嫌ったもの、
愛しんだもの、追い求めたもの、そして逃げたいもの。

これらのものは、あなた方の中で動いているのです。
光と陰のように絡み合い対になって。

ある陰が消えてしまっても、
次には残った光が他の光の陰となります。
こうしてあなた方の自由がその足枷となるものを失う時、
今度はその自由自身が、より大きな自由にとっての足枷になるのです。

(p. 64-65)
           b

(人生)
人生は闇だ、とあなたは聞きました。
あなた自身も疲れると、疲れた者が口にするこの言葉を反復するでしょう。
しかし私は言います。

人生は闇だ、もし欲求がなければ。
欲求は盲目だ、もし知識がなければ。
知識は無意味だ、もしはたらきがなければ。
はたらきは空しい、もし愛がなければ。

愛を持ってはたらくとき、あなたは自分を繋ぎ止めます。
自分自身に、人々に、そして神に。

愛を持ってはたらくとは何か。

それは、心から紡ぎだした糸で布を織ること。
あなたの愛する人がそれを身に纏うために。

また思いを込めて家を建てること。
あなたの愛する人がそこに住まうために。

そして、優しい心で種を蒔き、喜びに満ちて刈り入れること。
あなたの愛する人がその実を食べるために。

さらに、それはあなたのつくる全てのものに、
自分自身の精神の全ての息吹を吹き込むこと。
(p. 37-38)

           b


(喜びと悲しみ)
嬉しい時は、自分の心の奥を覗き込んでみて下さい。
気づくと思います。

かっては悲しみの原因だったものが、今は喜びの原因になっていることを。

悲しくて仕方のない時、心の奥を覗き込んでみて下さい。
気づくと思います。

かっては喜びの原因であったことのために、
今、泣いていることを。
(p. 40-41)

           b

(子供)
あなたの子供は、あなたの子供ではありません。
自己保存。これが生命の願望。
その願望から生まれた息子や娘が、あなたの子供なのです。
あなたを通ってやって来ますが、あなたからではありません。
あなたと一緒にいますが、でもあなたのものではありません。
 
子供に愛を注ぎなさい。
しかし、考えを注いではいけません。
子供には子供の考えがあるのです。
 
あなたの家に子供の体を住まわせなさい。
しかし、その魂を住まわせてはいけません。
子供の魂は明日の家に住んでいて、
あなたは夢の中でさえ、その家には立ち入れないのです。

子供のようになろうと努めて下さい。
しかし、子供をあなたのようにしてはいけません。
生命は後へは戻らず、昨日と同じ場所に留まってはいないからです。

(p. 25-26)

以上『預言者』カリール・ジブラン 著 佐久間 彪 訳 至光社 1990

           b

「縦笛を、そして歌を」

縦笛を、そして歌を。
歌は永遠の秘密。
縦笛の悲嘆は絶えぬ、縦笛は滅びても。

宮殿ではなく、私のような森を、
住処とされたのですか。

小川を辿って、岩山に登りましたか、
香水を身に浴び、光で乾かしましたか。

夜明けには、エーテルの杯で
ぶどう酒を飲みましたか。


縦笛を、そして歌を。
歌は最良の礼拝。
縦笛の嘆きは絶えぬ、命は滅びても。


昼下がりには、私のような、
ブドウの樹々に囲まれ、腰を下ろしましたか。

たわわなブドウの実は、
黄金のシャンデリアのよう。

夜には、草を広げて、
その身を宇宙でくるみましたか、

来たる未来を裁ち切り、
過ぎ去りし日々を忘れて。


縦笛を、そして歌を。
歌は心の調和。
縦笛の嘆きは絶えぬ、罪は滅びても。

縦笛を、そして歌を。
病も薬もお忘れなさい。
人間は線に過ぎないのです、しかも水で描かれた。




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